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最高裁判所第三小法廷 昭和25年(あ)982号 決定 1951年5月01日

本籍並に住居

和歌山県有田郡箕島町大字箕島四〇七番地

日稼業

神南平吉

明治三五年一月二一日生

右の者に対する常習賭博被告事件について昭和二五年三月二三日大阪高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から適法な上告申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人池邊甚一郎の上告趣意は末尾添附の書面記載のとおりであつてこれに対する当裁判所の判断は次のとおりである。

論旨第一点及び第二点は法令違反若くは事実誤認の主張であつて刑訴四〇五条所定の上告理由にあたらない。

同第三点は原審において弁護人の控訴趣意として主張せず且つ原判決の判断しなかつた事項について憲法違反の主張をするものであつて適法な上告理由とならないのみならず、賭博及び富籤に関する行為が風俗を害し公共の福祉に反するものというべきこと勿論であつて、政府乃至都道府県が自ら賭博開帳図利若くは富籤罪と本質上同一の行為を為すこと自体が適法であるか否か又これを認める立法の当否は問題となるが現に犯罪行為と本質上同一である或る種の行為が行われているという事実並にこれを公認している立法があるということだけから国家自身一般に賭博並に富籤に関する罪を公認したものとかこれが処罰を定めた刑法第二三章賭博及び富籤に関する各条項が当然に失効したものということはできない。(昭和二五年(れ)第二八〇号同年一一月二二日大法廷判決参照)然るに所論は刑法一八六条が当然失効したことを前提とするもので採ることができない。なお記録を精査しても刑訴四一一条に該当する事由は認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号に従い全裁判官一致の意見により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介)

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